バレーボールの練習以降、右肩が上がらなくなった60代女性に施術しました。
大阪市在住
バレーボールが趣味の60代女性、平成31年、1月にバレーボールの練習でブロックを受けてから、肩に強烈な痛みが発生し、以降、腕をあげることができなくなったということで、施術させていただくことになりました。
経過順調で症状も落ち着いてきましたので投稿します。
右肩の動作不全の背景に、右胸の手術歴があり、そして、その他腰や膝等にも強い症状がありました。
右肩の痛みはボールの衝撃が起因となっていますが、お話を伺うと、単なる外傷ではないことがわかりました。
平成10年頃に、右脇のやや内側に良性の腫瘍が見つかり、手術にて取り除いたと言うことで、それ以降、肩は挙げることは出来たが、動かした際にコリコリと雑音がなったり、力の入りにくい状態が長年続いていたようです。
そして平成23年頃から、右肘内側から小指にかけて痺れが始まり、現在も続いているとのこと。
これだけでも大変な状態ですが、お話を聞くと、肩以外にも症状がありました。
まず、腰の痛みは日頃から抱えておられるようで、体を左に捻ると右側の腰に痛みがあるようです。加えて右のお尻はずっとピリピリと痺れているそうです
そして、右膝。平成26年にバレーボールで負傷し、当時はパンパンに腫れてしまったとのこと。ただ、膝の靭帯なのか、半月板なのか負傷部位はわからないとのことでした。
今だに、膝は完全には曲げ伸ばし出来ない状態で、特に膝を曲げた状態から伸ばすと痛みが起こるそうです。
お仕事はパソコンなどをよく使用されるようで、1日のほとんどが座ったままだそうです。
現在の肩の状況
自分自身の力で腕をまっすぐ挙げてもらいましたが、45度の角度で強い痛みが生じます。
痛みため、脇が開くことが出来ません。
背中に手を回すこともできません。(ズボンを引き上げる動作が困難。)
人に腕を挙げられた際、耳の高さまであげることは可能でしたが、90度付近で一度小さな痛みがおこります。耳まであげられた腕を降ろす際、雑音や引っ掛かり感があり、さらには強い痛みも伴いました。
バレーボールでは、右胸の手術以降すぐは、上からサーブを打つことができていたが、徐々にボールを打つ動作が辛くなり、ここ20年近くは、ずっと下から(アンダーサーブ)でしか打てない状況です。
バランスのチェック
バランス療法は、他動運動の検査をもとに、体を正しい位置関係(筋肉の働きが左右同じように働き、安定した状態)になるよう治療を進めます。
したがって、各関節、特に肩関節、膝関節、股関節の動きを比較する必要があります。
肩関節は右側が挙がらないのが解っていますので、
股関節、膝関節、そして、首の動作を確認しました。
股関節は仰向けで足を組み、どちらの方が開きやすいかを判断します。左の股関節は痛みなく広がます。対して右側は、股関節に痛みはないものの、広げた際に太ももの外側に痛みがありました。
膝関節は、うつ伏せで同時に膝を曲げることで左右差を確認します。過去に怪我をされたということもあり、右膝の方が曲がりにくいことがわかりました。
加えて、うつ伏せのままでは膝は完全に伸び無い状態でした。
そして、首の動きを確認します。うつ伏せの状態にて、右、左と首を回していただきます。このとき、反対側の耳を床につけていただき、どちらの方がつきやすいか、そして、痛みや張りがあるかどうかを確認します。
右を振り向いたときに、右側の首に張りを感じ、耳もつきにくいということでした。ついで、肩甲骨の高さも確認したところ、右側の方が高い位置にあることがわかりました。
初回の施術で、種々の症状が改善。肩は、やや上がるようになり、脇も開くようになりました。そして、腕の痺れが小指だけになりました。
肩に強い痛みがあるため、まず下半身から施術を始めました。
曲がりにくい方の脚から施術を行い、ついで、曲がりやすい方の脚へと施術を進めました。
うつ伏せの姿勢で、曲がったままの右膝に改善が見られ、少し伸びるようになってきました。
仰向けになっていただき、特に股関節の位置を調整する手技を多用しながら施術を進めました。
右膝は、完全にとはいきませんが、先程よりもさらに、伸びるようになりました。
仰向けのまま、首を振り向く動作を確認したところ、首の左側にあった違和感がなくなっていることが確認できました。加えて、右の股関節を開いたときに生じていた太もも外側の痛みが軽減していましたので、1度座っていただき、途中経過を見ました。
座っている姿勢では、ピリピリと痺れていたおしりの症状は無くなりました。
体を捻る動作で、腰の痛みは違和感程度に落ち着き、稼動域も大きく改善されていました。
そして肩は脇を広げることができました。しかし、まっすぐ腕をあげると痛みは残り、自分の力では腕を耳までつけることはまだ出来ませんでした。
続いて、上半身の施術を進めます。
痛い側の肩を動かすのは、今回見送り、痛くない側の肩の動きや首の回りの筋肉を主に調整しました。
結果、
体の捻る動作、首の振り向く動作でほぼ痛みは消失し、大きな改善がみられました。
肩の運動は、雑音は伴いますが、耳の近くまで自力であげることができました。
そして、右肘から小指まであった痺れは、小指だけとなりました。
初回でこれだけ肩に変化があったので、患者さんにお伝えしました。
「近い将来、オーバーサーブ(肩を挙げての上から打つサーブ)ができるかもしれませんよ。」
すると、
「20年近くも出来てないから、先生無理やわー。」
と、おっしゃるのです。
患者さんは諦めている様子でしたが、私自身、これはいけそうだな。という実感がありました。
一旦これで施術は終了し、次回も来ていただけるお約束ができました。
肩の挙がる期間が延び、小指の痺れが無くなる日が出てきました。
初診後から、一週間に2回ほどのベースで4回施術させていただきました。
患者さんから、「最近ズボンを引き上げるのが楽になってきたわ」と言っていただきました。
腕が後ろに回りやすくなって来たことがわかります。
現在、腕は上から振ることが出来るが、物に当たると、まだ肩に若干痛みがでるようです。
腕からの痺れは消失し、日によって小指の方に違和感が出たり出なかったりしているようでが、発現しない時間の方が多いようです。
腰の痛みは仕事の内容によっては、疲れたり重い感じがあるようですが、強い痛みは出ておりません。
膝は、まだ完全に曲げ伸ばしするには至りませんが、バレーボールをした後、若干痛みが出てくるようです。
全体的に、みるみる体の調子が良くなることを実感していただき、本人も、もしかしたらオーバーサーブができるかも、と期待していただけてるようです。
このまま施術を続けていけば、おそらく打てることができるだろうな、と私自身も感じました。
まとめ
体の筋肉の左右差を取り除いて、種々の症状を取り去る、このバランス治療でも、変形したものや、欠損したものまでは治すことは出来ないので、初診時、手術されている肩は、改善はされても、それほど挙がらないのでは?と不安に思っていたのですが、良い意味で裏切られ、かなり経過がよい状況が続いています。
施術回数を重ねるごとに、肩の雑音、引っ掛かり感はみるみる改善されて来ており、動きも滑らかとなってきています。
各場所に生じていた痛みや痺れは、症状の起こっている場所だけが問題なのではなく、全身の筋肉の働きが正しく働いていなかったせいであると考えます。
正しく働いている状態とは、筋肉の働きが左右同じように働いている状態であり、筋肉の働きに左右差が生じれば、体を支える機能にも左右差が生じます。こういった状態は、各関節の位置が安定しなくなり、スポーツ活動や日常生活など、あらゆる動作に必要以上の負担を強いることになるためです。
しかしながら、全身のバランスを正すと、手術したあとの体でも、ここまでよくなるのか、という感動がありました。
20年近くも諦めていたオーバーサーブを打つことを、再度打てるかもしれないと希望をもっていただけたことが大変嬉しかったです。
追記 2020.6
現在も月一度くらいのペースで施術させてもらっています。
バレーボールのサービスは上から打つことが可能にあり、問題なくゲームが行えるようになったそうです。
右膝は施術後に正座ができるようになるまで回復いたしました。
そして、不自由なく階段の上り下りができるようになったとご報告いただきました。
日によって、右膝に違和感が出たり出なかったりと、課題はまだ残りますが、以前に比べてずいぶん良くなったと喜んでいただいております。