脳梗塞のため、左脚に痛みや痺れがある60代男性に施術しました。
大阪市城東区 60代男性。
この方は現在も治療中で、症状は全て解決したわけではありませんが、経過が良いため記載させていただきました。
主訴
1、左のお尻から、太ももの外側、すね、足の甲、足の裏にかけて痺れがある。
痺れのため力が入らず、歩行が困難であるとのこと。室内では杖を、屋外では押し車を利用して歩いています。
自宅のベッドに上がりたくても、足が上がらず不自由している。加えて、寝返りしたくても思うように足が動かず苦労されているとのことです。
2、左肩が痛くて、腕をあげることができない。
初回施術させていただいた、2ヶ月程前に転倒され、以降ずっと痛いとのことです。じっとしていても疼くことがあり、腕をあげたくても、少し脇が開いたくらいで痛みが出ます。
平成21年に脳梗塞をされたそうです。
いつも、付き添いの方と2人でお越しになられています。
体のようす。
脳梗塞の既往があるためか、左下半身の筋肉が落ちて、右側より痩せているのがわかります。
しかしながら、口調は比較的しっかりしており、呂律もしっかり回っていました。
姿勢を見ましたが、激しい猫背でした。
動作の確認のため、座った姿勢で左膝をあげていただくようお願いしましたが、試みても、体が前に引っ張られ、思うようにあげることができないようでした。
姿勢を維持する筋肉達がうまく働いていないことがわかります。
歩行を見ました。
左膝は、やはり前に上がらず、常に摺り足です。右脚は比較的機能していますが、立ち姿、歩行ともに股が外に開き、爪先が外にむいたままでした。
うつ伏せの姿勢。
体に対して、腰から下が左に傾く。上からみたら逆の“く”の字のようです。
両方の爪先は右側を向いており、骨盤の右側が床から浮いています。力を抜いている状態なのに、体が右に回旋しているのがわかります。
バランスのチェック
バランス療法は、他動的に手足の関節の動きを検査し、それに基づき施術を行います。
可動域が大きいから正常、可動域が小さいから異常。という判断ではなく、左右の可動に差が生じている状態が異常であると判断します。
つまり、骨格を支持する筋肉、関節の可動を担う筋肉群を、左右対称に働くよう整えることで、良好な体に整えます。
仰向けの姿勢
バンザイの姿勢を試みますが、左肩に痛みがあり、上がりません。
股の開きを確認しましたが、左の股は開きにくく、右の股は大きく外に開きました。
うつ伏せの姿勢
両膝をの曲がり具合を比較しました。左膝はしっかり曲がりましたが、右膝は曲がりにくいようです。
1回目(11月1日)の施術により、 座った姿勢で比較的膝が上がるようになりました。
左肩に痛みがあったため、膝の曲がりや股関節の可動など、特に下半身に意識して施術をさせていただきました。
寝返りは、まだ人の手を借りないとスムーズにいきませんでした。
脚の痺れ、肩の痛みは軽減できたものの、消失するには至りませんでした。
一番の変化は、椅子に座って状態で、施術前に比べて脚があがるようになりました。
2、3回目(11月7日、12月6日) 激しい猫背がやや解消。座った姿勢で膝がさらに上がるようになりました。
3回目の施術が終わり、姿勢は初回に比べかなり改善されました。
機能を確認するため、椅子に座った姿勢で膝をあげていただくようお願いしたところ、円滑に動くことができ、痛みも無いようでした。しかし、左のお尻からの痺れは軽減はするものの消失していません。
就寝時の肩の疼きは、消失したとご報告受けました。本人から、日常生活に支障は無い。と言っていただけましたが、動作はまだ顎の高さまでしか腕は上がりませんでした。
4回目(12月16日) 一人で寝返りができるようになり、仰向けの姿勢からも起き上がれるようになりました。
今回は以前と違って、大きな変化がみられました。
仰向けやうつ伏せなど、姿勢を変えて施術させていただくのですが、人の手を借りることなく、お一人で寝返りができるようになりました。
加えて、仰向けの姿勢から、腹筋運動をするように起き上がれるようになっていました。
5、6回目(1月6日、1月17日) うつ伏せから起き上がるとき、四つ這いが行えるようになりました。
この頃から、痺れに変化が出てきました。おしりの痺れが感じなくなったそうです。
加えてもう一つ、嬉しい変化がありました。
うつ伏せから仰向けになる際、いつもは右手を反対側に床を滑らせるように、左回りに寝返りしていたのが、たどたどしくではありましたが、四つ這いの姿勢になってから寝返りされました。
脚の踏ん張りや可動が向上され、肩の痛みも消失したため四つ這いの姿勢が保持できたのだと思います。
ご本人も、大変お喜びになられておりました。
7回目(1月28日)、トレーニングを交えての施術開始。左太もものしびれが解消されました。
1月28日から、トレーニングを開始しました。
内容は大袈裟なものでなく、つま先立ちの練習です。
筋力も低下していることもあり、頑張りすぎると強い筋肉痛が起こるのを避け、手をしっかり支えながら、数度行いました。
日頃、押し車に頼っていることや、摺り足で、かかとを浮かせる動作が日頃なかったためか、体を起こす機能が不十分なためか、前に倒れそうになります。
かなり苦労されておりました。
姿勢保持について
姿勢の保持には、体幹(お腹と背中)の筋肉をしっかり鍛えなければならない。と世間ではよくいわれております。
確かに、体幹の筋肉も重要ですが、私はそれよりもまず、下半身の筋肉、特に膝から下の筋肉が重要だと考えます。
すねやふくらはぎは、足首や指の可動を担う筋肉が多くあります。
両足で地面をしっかり蹴りつけることで、膝はしっかり延びることができ、さらには胸を張ることが可能になります。
良い姿勢をとるためには、足の指の力でしっかり地面をつかむ、という動作が必要不可欠です。
そして、脚の機能が向上することにより、姿勢の安定が得られると、上半身の無駄な緊張が減少しますので、背中や肩のこりも減少していきます。
たとえば、椅子から立ち上がる動作では、
足の指を浮かせたまま立つ場合と、しっかり足の指を地につけ、体重をのせて立つ場合とを比較すると、
後者の方がスムーズに立て、加えて腰や首の負担が無いのです。
8~12回目(2月4日~3月24日) 寝返り、起きあがり、四つ這いはスムーズになりました。
回数を増やす毎に、徐々に良くなっていくのが見られました。
肩の痛みは消失し、腕は耳の横まで上がるようになりました。
左脚の痺れは残存するものの、現在、膝から下だけとなっております。
寝返りや起きあがりは人の手を借りなくともスムーズに行えます。
歩行は、変わらず押し車で歩かれておりますが、膝は両脚とも進行方向を向いており、常に摺り足であった左足は、足首、膝の可動がよくなり、改善されております。
つま先立ちの訓練も、改善がみられています。トレーニング開始時はしっかりと手を繋いで行っていたものが、最近では、私が骨盤に触れるだけの補助で行えるようになりました。
しかし、上半身は前のめりに突っ込んでしまうので、お尻、背中、肩甲骨を背骨に寄せる筋肉など、体を起こすための筋力増強も、一つの課題であると感じます。
ここに施術を受けられる前は、体は痛く、痺れのため、何をしようにも思うように動かすことが出来なかったため、日頃、塞ぎ混むことが多かったそうです。
余生をずっと悲観されていた方だけに、今は治療に大変前向きになられ、大変嬉しく思っております。
考察
この方は、脳梗塞の既往がありながらも、各症状が改善されることが実証できました。
今後は、施術に加え、脚のトレーニングや、お尻、背中の筋力の増強を図りたいと考えております。
脚の痺れの程度はどこまでよくなるかは、現状わかりませんが、さらに筋力が充実し、姿勢保持の向上と、施術によって左右の筋肉が同じように働くことを求めていけば、さらに良い結果が得られるのではないかと期待します。